3月22日から3日間かけて、秩父エリアの甲武信ヶ岳、両神山、瑞牆山の3座を登ってきました。
今回は甲武信ヶ岳登山で感じたトレースの話題を中心にお届けいたします。

冬山登山に限らず、先行者が付けてくれた踏み跡がトレースとなり、後続者は安心して山道を進んでいける。

しかし、冬場のトレースは大雪が降ると全くなくなり、木に括り付けられたピンクテープを頼りに登ることもあります。
それでもトレースが無くなることは、悪いことばかりではありません。
人が踏み固めた道より、美しくて真っ白なキャンパスに自由にルートを描けるメリットもあります。

3月22日に登った甲武信ヶ岳では2日前に降った大雪が堆積して、行程の3/4地点にある千曲川源流を越えた急登ゾーンからトレースが全く無かった。

前日の21日にも来たというカップルの話によると、昨日は登山口から千曲川の源流までの間もトレースがなく、雪をかき分けて進むラッセル続きで、源流まで来た時にはタイムオーバーとなり登山口に引き返したそうだ。

昨日は他のパーティーも含めて8人全員が源流地点で引き返したから、その先は今日もトレースがないらしい。
このカップルは登頂を諦めきれず、源流までは昨日のトレースがあるから何とかなるだろうと、リベンジに来たそうだ。
源流地点でこんな話をしていたカップルと私をあっという間に抜き去っていったひとりの若者が、先頭を切って急登ラッセルを開始した。

雪の深さは源流地点までが40センチ、急登ゾーンからは膝から股関節位で、深いところでは60センチの新雪が積もっていた。
わたしも5分ほど遅れて若者に続いた。その後にカップルも加わり、一定の間隔をおいて4人が山頂を目指した。
通常は先頭の負荷が高いので、先頭を交代しながら進むのだが、若者はよほどの経験者らしく、あっという間に後続を引き離して進んでいった。

冬山登山では、こういう人がスターであり、尊敬と感謝を一身に集める。山頂で追いついた時には、さすがに疲労感はあったようだが、最大限の称賛を贈った。

頂上では別ルートで登ってきたソロ登山者4名が揃って記念写真を撮っていた。聞いたところによると、4人並んでラッセルの先頭を交代しながら来たそうだ。
このパターンは、チームワークが醸成され、登頂する頃にはすっかり仲間になって、喜びを分かち合う関係性ができていた。

トレースが無いことは大変だけど、ラッセルすることで、また別の喜びが得られるという点は冬山登山の奥深さだ。
偶然、2コースから登頂した8人が顔を合わせて、お互いを称え合い、一期一会の出会いを楽しんだ。
このようなトレースとラッセルの関係性は、人生に於いても同様のことが言えるように思う。
人は幼少期から、社会に備わったトレースに沿って成長していく。例えそれに無自覚であっても、大人になることができる。
途中でトレースから外れて我が道を行く人も中にはいるけど、多くの人は普通に進学を繰り返して、就職して働く。
効率的ではあるけど、代償として周りと同じような味気ない人生になることもある。
また、トレースは時間の経過とともに多くの先行者に踏み固められ岩盤のようになったり、ゴミが吹き溜まって汚れたりしていることもある。

一方、トレースから外れると真っ白なキャンパスがあり、個性豊かな人生を描ける可能性があるものの、失敗するリスクも高まる。
日本の社会では、このトレースが劣化しているように思う。がんじ絡めの規制や行き過ぎた道徳観が自由を奪い閉塞感が生じている。
わたしは家庭の事情もあって、高卒時に社会のトレースから外れた。20才で独立して飲食店を開業し10年は何とか経営したけど11年目に新店の出店に失敗して廃業した。
それからサラリーマン生活という別ルートを辿った。あまり誇れる人生では無いけれど、泣き笑いの多い、彩りだけは充分にある人生を過ごしてきた。
次の冬山登山では、ラッセルの先頭をかって出て、ほんの数分でも見知らぬ人のために道を切り拓くおじいさんになれたら良いなぁ。

とりあえず、温泉に浸かって翌日の両神山登山に向けて移動。移動時間は3時間超、秩父エリアの広さをなめていました(^_^;)
28/100名山踏破チャレンジ【秩父 甲武信ヶ岳】編
【難易度3】【眺望度3】【愉快度3】 ※5段階評価(5が最高点)個人の主観的な感想です。
3/4までは、変化が少なく同じような樹林帯をひたすら歩き続けて、残り1/4は樹林帯の急登で、頂上だけ視界が開ける登山道でした。



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