はじめて病室で迎える朝、病室の窓から息子のマンションが見えました
1月6日(木)初めての病院食
はじめて病室で迎える朝、病室の窓から長男家族が暮らす千里中央のマンションが見えた。虚血(きょけつ)発作を発症して、昨夜吹田市北部の病院に緊急入院した。11年間会社を病欠したことも無かったので、それは想像もしていなかった突然の出来事だった。これは悪い夢が覚めていないだけだと、半ば本気で思っていた。

無機質に並べられた初めての朝食を見て少し心が痛んた。学生のころから飲食店でアルバイトをはじめて、その後35年に渡って飲食業を生業として生きてきた。美味しく見えるように盛り付けることは、当たり前と思っていた。それがここでは違う、食を楽しむのではなく、栄養価や塩分、それにコストが何より大切で、見た目など関係のない世界なのだ。
ここは病院の急性期病室、救急車等で急患として運ばれてきた患者が一旦収容され、集中的に治療と経過観察をしているところだ。4床の急性期患者がひとつの部屋にいる。そのため医師や看護師がひっきりなしに往来し、患者自身も呼吸が困難なひとや苦しみに耐えきれず奇声を発しているひともいて病室初体験者には、とても眠れる状態ではなかった。とはいえ起きていてもやることはないので、ベッドで横になっているだけだ。
ふと窓の外を見ると長男家族の住むマンションが遠くに見えた。昨日は夜中に入院したから気づかなかった。ほんの3日前まで別荘で一緒に食事を楽しんだり雪だるまを作ったりしていたのに、今は別世界にいるように思えた。それでも心は平静でいられた。
昨夜妻にノートパソコンを持ってきてもらっていたので、仕事のメールを確認したり、もやもや病のことをググったりして過ごした。懸念されていた脳梗塞の発症も、昨夜から服用している5種類の薬の効果で兆候すらなかった。
急性期患者の救急搬送が重なった夕刻には一般病棟に移ることになった。同部屋の4人の中では症状が一番おだやかだったからだろう。この日、もっとも時間をかけて考えたことは、仕事を辞めるか否かということだった。
先生の見立てによると、検査から手術、そしてリハビリまで含めると2~3か月かかる見込みで、後遺症や再発の可能性もあることから、元通りに仕事ができるかすら、分からなかった。
代表取締役社長を務めている会社はプライム市場上場企業で、毎年6月に株主総会を開いている。総会の開催日時や場所、議案の内容を事前に知らせる招集通知に取締役選任議案を掲載すには、印刷の都合があり、4月末ごろには役員候補者を確定しなければならない。さらに役員候補を決めるには取締役会で検討する必要がある。そのため、取締役会前に候補者のリストアップも求められる。
こういったスケジュールを考慮すると、1月中には進退を表明しておく必要がある。取締役の任期は2年だが、たまたま今年は任期満了の年度で、改選期にあたるため、とくに進退について決める必要があった。
難病情報センターがホームページに記載している内容によると、もやもや病は脳の血管に生じる病気で、内頚動脈という太い脳血管の終末部が細くなり、脳の血液不足が起こりやすくなる。このため、一時的な手足の麻痺や言語障害を起こす場合がある。
血流不足を補うために拡張した脳内の血管、「もやもや血管」が脳底部や脳室周囲などに見られることが特徴。初発症状が脳出血や脳梗塞の場合は、運動麻痺、言語障害、高次脳機能障害などの後遺症が出るケースがあるそうだ。
昨日は矢継ぎ早にMRIやCTの検査を受けたものの、今日は打って変わって何もなかった。急性期では緊急手術の必要性を判断するために順番そっちのけで検査をするものの、緊急手術が不要になると今度は予約順に検査が進んでいくようだ。
今日の収穫は薬が効いたこと。血液をサラサラにする薬(バイアスピリン)で細くなった動脈の血流を促進したり、毛細血管からの供給を促進したりする。あと血圧を下げたり、胃を薬から保護したりと色んな効能があるといわれる薬を飲んだ。また点滴もあったので脱水症状や血中の酸素濃度も改善し発作も治まった。
1月7日(木)カテーテル検査
深夜の点滴交換に来た看護師さん(男性)が新人で、手際が悪く2分ほどで済む作業を15分ぐらいかかってしまい、そこで目が覚めてその後寝れなくなった。内心穏やかではなかったが、次男と同じ年ぐらいで雰囲気も似ていたので、怒りが治まり、ミスを笑顔で受け流すことができた。
そんなことがあり、寝不足気味で通路をあるいていると担当医とすれ違った。立ち話のような形でカテーテル検査は来週の金曜日(1週間後)になりると告げられた。思わず、検査を待つだけで1週間入院するんですか?と問いかけた。寝不足もあり、若干強いニュアンスで伝わったのか、先生がそれはまずいですか、もう少し早くできるよう調整してみます、と返答した。
その1時間後、今日の夕刻にカテーテル検査を入れることができた。大丈夫ですかと看護師から伝えられた。もちろん大丈夫、ということで急遽実施がきまった。カテーテル検査は動脈に細い管を通して血管の状態を調べる検査だ。
ここでの教訓は病院に言われるがままにしていると、命に関わることでも、後回しにされることがあるということだ。患者にとっては非日常的な一大事でも医療機関で働く人からすると、数多くいる患者の内の1人であり、日常業務のなかで淡々と治療していくものなのだろう。
検査後は一転、主要な検査はすべて終えたので明日、一時退院して手術日前日まで家で過ごして、また病院に来てくださいとのことだった。その間に通院して診察と手術の手続きを説明するとのことだった。また、セカンドオピニオンを希望するのなら紹介状を書くから、この間に受診してくださいとの説明もあった。
先生曰く、この病院で、もやもや病の手術は年1回か2回行っていて経験のある医師も揃っているので十分対応できる。しかし、専門外来があるところや当院にはない脳血流検査SPECTができる病院もあるので、検討されても良いでしょう、というニュアンスだった。
また、手術の実施は最短でも2月前半になるとのことだった。虚血発作が頻発していたものの薬でそれを抑え込めているので、1か月程度なら問題ないとの判断のようだが、爆弾を抱えたまま手術を待つ形になるので、もう少し早くできないのかと聞いた。しかし手術に関しては既に予定がギッシリと詰まっていて、手術室も人員もどうすることもできないとのことだった。
1月8日(金)一時退院
手術日が大分先なので一時退院した。例えば、美容院に予約なしで行って今日は予約が一杯なのでカットするのは無理ですねぇ、といわれても普通に納得できる。しかし、いつ発作が起こるか分からないのに当たり前のように2月の初旬までは手術の空きがないですねぇ、といった説明をされるというのは入院初体験者にとっては想定外だった。とはいえ人員も手術室も有限なので病院側からすると当たり前なんだと思い返した。
それでも内心は手術が延びて良かったと思った。ネット情報によるとセカンドオピニオンを取った方が良いという意見が多くそれに感化されつつあったので、その間に別の病院でも診てもらおう考えた。家の近くにある国立病院には、もやもや病専門外来があり、症例数も関西ではトップクラスで検査設備面でも群を抜いていたので、この病院で診てもらって、本当に手術が必要なのかも含めて確認したいと思いはじめていた。
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